子宮腺筋症

子宮の内面を覆っている子宮内膜という組織は卵巣から分泌される女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)の作用を受けて、増殖、剥脱を繰り返しています。

この剥がれたときが月経です。

子宮の内面にだけこの子宮内膜があれば何の問題もありませんが、この子宮内膜が別の場所にできることがあります。

最も多いのは卵巣で、卵巣の中に子宮内膜組織ができると、この部位で月経と同じ現象がおこり、血液はそこに貯まっていくことになります。

古い血液が徐々に貯まるために卵巣は腫れ、周囲の子宮、腹膜、直腸などと癒着し、月経痛の原因となります。

この様な病気を子宮内膜症(以下内膜症と略)といいます。この時に貯まった古い血液はチョコレート色をしているのでこの卵巣の腫れはチョコレート嚢胞と呼ばれます。
内膜症の原因はよく判っていませんが、月経血が卵管を通じて腹腔内に逆流し、その中に含まれていた子宮内膜が卵巣にくっついて増殖するという説と、卵巣の組織の一部が何らかの影響で子宮内膜に変わってしまうという説があります。

この様に子宮の内面以外の場所にできた子宮内膜を異所性の子宮内膜と呼びますが、実はこの異所性の子宮内膜が子宮の筋肉の中にできることもあります。

これが子宮腺筋症(以下腺筋症と略)です。 以前は子宮以外にできる子宮内膜症を外性子宮内膜症、子宮にできる子宮内膜症を内性子宮内膜症と呼んでいました。

しかし、この2つの疾患はでき方が全く違い、また治療法や薬物に対する反応も異なるため、同一の疾患名は適当でないとされ、内性子宮内膜症は子宮腺筋症と病名が変わりました。

従って、子宮腺筋症という病名は歴史が浅いので一般には馴染みがありませんが、病気そのものは昔からある病気で、決して珍しい病気ではありません。
腺筋症の発生の仕方は内膜症と違って、正常の子宮内膜が何らかの原因で子宮の筋肉のなかに深く潜り込んで行くためとされています。

この深さが子宮筋の厚みの80%を越えると強い月経痛を起こすことになります。通常、子宮は全体的に大きくなり、月経量も増えます。