高プロラクチン血症

高プロラクチン血症とは

プロラクチンというのは脳下垂体から放出される刺激ホルモンで、乳腺を刺激して乳汁を分泌させるように働きますが、このホルモンの分泌が異常に亢進して乳汁分泌、無排卵月経などを起こすようになったものを高プロラクチン血症といいます。

高プロラクチン血症の症状

高プロラクチン血症による症状としては次のようなものがあります。

稀初月経

年に数回しか生理が起こらない。

 

無排卵月経・無排卵・無月経

生理や排卵が起こらない、または生理があるが排卵しない。この場合は基礎体温のグラフが平坦になります。

 

不妊症

上記のように排卵が起こらない、あるいは起こりにくいことで、結果的に妊娠しづらくなります。

 

乳汁が出る

出産の経験がある場合は、プロラクチン値が正常範囲でも乳汁が出る場合があります。
この場合は生理が順調にあるか、基礎体温が二層 になっていれば心配することはありません。
ただし、乳汁に血が混じっていたり、乳汁ではない分泌物の場合は、病院を受診しましょう。

 

頭痛・視野が狭くなる視野狭窄・視力異常

脳下垂体に腫瘍があって高プロラクチンになっている場合に起こる症状で、吐き気やめまいを伴う場合があります。
このような自覚症状がある場合は、脳神経外科を受診しましょう。

 

習慣性流産

習慣流産の方の15%に高プロラクチンが見られるとの報告もありますが、プロラクチンの値が高いからといって、流産率が高くなる訳でもないようです。
高プロラクチン血症の場合、黄体機能不全を合併することがありますがこれが誘因になっているという見方もあります。

 

 

高プロラクチン血症の原因

高プロラクチン血症になる原因は1つだけでなく、いくつかあります。

原因は大きく分けて4つあるので、それぞれの原因を紹介していきます。

 

脳下垂体の腫瘍(しゅよう)

高プロラクチン血症の原因の1つとして、脳下垂体にできた腫瘍が原因になることがあります。
プロラクチンは脳下垂体から分泌されるホルモンであるため、脳下垂体に腫瘍などができるとホルモンの分泌に異常をきたす場合があります。

 

薬の副作用

高プロラクチン血症の原因の1つとして、薬の副作用が原因になることがあります。
当然ながら、ひとくちに薬といっても様々な種類の薬があります。
そのなかでも、高プロラクチン血症の原因になる副作用を持った薬は「抗うつ剤」や「胃潰瘍(いかいよう)治療薬」に多いです。

 

ストレス

高プロラクチン血症の原因の1つとして、ストレスが原因になることがあります。
女性は生理や排卵、出産などをホルモンの分泌で調節して行っています。
ホルモンの数も多く、ホルモンのバランスは非常に繊細になっています。
日常生活などで、大きなストレスを感じるとホルモンバランスは乱れることがあり、ホルモンバランスの乱れがプロラクチンの異常分泌を引き起こすことがあります。

 

原因不明

高プロラクチン血症の原因として最も多いのが原因不明の高プロラクチン血症です。
例えば、日々の生活週間が徐々にホルモンバランスを乱していったことが原因で高プロラクチン血症を引き起こしたような場合は原因不明と診断されます。
上でも書きましたが、女性のホルモンバランスは非常に繊細なので、簡単なことで崩れてしまうのです。

高プロラクチン血症の検査方法

 

問診によって、乳汁漏出の有無、月経の状況(周期、期間、経血量)、体重変化、薬物服用の有無、寒がり・皮膚乾燥、頭痛、視野障害などを確認します。
寒がり・皮膚乾燥などを認め「原発性甲状腺機能低下症」を疑う場合、甲状腺機能検査を行います。抗精神病薬・抗うつ薬、抗潰瘍薬・制吐薬、循環器薬・血圧降下薬、ホルモン剤などを服用している場合、「薬剤性高プロラクチン血症」を疑います。

「高プロラクチン血症」を疑う場合、血中プロラクチン濃度を測定します。血中プロラクチンの正常値は測定法によって異なりますが、30ng/mLを超えるものを「高プロラクチン血症」と診断します。ただし、血中プロラクチンは変動しやすく、夜間、食後および排卵期周辺で高くなるため、月経7日以内、食事前の午前中の検査が推奨されています。また、乳汁漏出、月経異常、不妊などの症状を認めるのに血中プロラクチン値が正常のものを「潜在性高プロラクチン血症」と言います。この場合、夜間などに血中プロラクチンが上昇していると考えられ、負荷試験(TRH試験)で診断を行うこともあります。一方、症状が無い「高プロラクチン血症」を「マクロプロラクチン血症」と言い、治療を必要としません。「高プロラクチン血症」の15~25%に見られます。

血中プロラクチン値が100ng/mLを超える場合、「プロラクチン産生下垂体腺腫」を疑い、脳神経外科にMRI検査を依頼します。

 

高プロラクチン血症の数値

プロラクチンの正常値

プロラクチンの正常値は測定する検査方法により若干の違いがあります。

検査法     正常値 (ng/ml)
EIA法   2.7-28.8
IRMA法  1.4-14.6
CLIA法   4.3-32.4

「高プロラクチン血症」を疑う場合、血中プロラクチン濃度を測定します。
血中プロラクチンの正常値は測定法によって異なりますが、30ng/mLを超えるものを「高プロラクチン血症」と診断します。
さらに血中プロラクチン値が100ng/mLを超える場合、「プロラクチン産生下垂体腺腫」を疑い、脳神経外科にMRI検査を依頼します。

 

高プロラクチン血症の治療法

 

治療法は原因ごと異なりますが、基本的な治療法として以下のことが挙げられます。

薬剤の中止

薬剤の継続的な服用が、ホルモンバランスの乱れを引き起こしている場合、その薬剤の服用を中止します。体に負担をかけることなく、もっとも簡単にできる治療法です。一方で薬剤が他の病気の治療で必要なもので服用が必要な場合は、薬剤を代替したり、量を減らすなどしてプロラクチンの値を下げるよう努力します。医師と要相談する必要があるでしょう。

 

手術

高プロラクチン血症が脳下垂体の腫瘍によって引き起こされているのであれば、摘出手術を行う必要があります。良性とはいえど、大きくなると感覚機能に支障をきたすこともあるので注意が必要です。

 

ドーパミン薬の服用

ドーパミンというホルモンを薬で服用する治療法です。ドーパミンはプロラクチンの分泌を抑える効果があります。継続的に服用することでプロラクチンの値を下げることが期待できます。

 

甲状腺ホルモン薬の服用

甲状腺機能低下症が原因の場合、甲状腺ホルモン薬を服用します。体内のホルモンバランスを調整し、プロラクチンの分泌量を減らす効果が期待できます。

 

リラックスも一つの治療法

ホルモンバランスの乱れは悪い生活習慣によって引き起こされます。日々の仕事が忙しい。食事がおろそかになっている。仕事の人間関係に強いストレスを受けている。このようなことが引き金となります。病気を治すことに注力するもの大切ですが、その背景にある生活習慣を見直すということも必要です。心が休まっていない、体が休まっていない状態であれば、意識的に休めるようにしてください。

 

漢方という選択肢

漢方は副作用が少なく、体の自然な回復力を向上させるので、妊娠を意識している女性に良い治療法です。
また、漢方の種類によっては精神的な安定をもたらす効果もあります。体をリラックス状態にしてくれるので、自然に病気が治癒していくことが期待できます。

潜在性高プロラクチン血症

潜在性高プロラクチン血症とは、高プロラクチン血症の症状が日中は何もないのに「夜」にだけ症状が出たりするなど限定的に症状が出る病気のことです。